11月度.pngこの一ヶ月、中秋から晩秋までを一気に駆け抜けたように思います。秋晴れの好天から始まって、冷たい雨の降り続く一日、kouyou.jpg濃霧の朝、虎落笛を伴う冷たい木枯し、そして月末にはまさかの雪。快適な好季節を楽しむ ゆとりもなく、すでに冬を迎えつつあります。店の植木場にある もみじの紅葉が、今年は順調でした。店入口の正面にあるため、ことある度に目が向きます。上旬を過ぎた頃より色づき始め、特に日当たりの良い部分が鮮やかに染まりました。kouyou2.jpg茶葉と同じく、一葉一葉に個性があり、色づき具合もそれぞれ。緑・黄・橙・紅 まさに 色とりどり。それが天候の変化に合わせ、日毎に移ろいます。また 朝・昼・夕ごとの陽光に映し出される彩りも趣を異にします。そして一斉にではなく、少しずつ まちまちに変化する様が存分に楽しめました。気がつけば、師走がそこまで来ています。

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先週末の「非日常的 最高級茶の試飲会」では3種類の狭山茶を呈茶しました。今年・この時期でなければ用意できない狭山茶達。

1.「第44 回関東ブロック茶の共進会」普通煎茶 荒茶銀賞受賞茶

2.「日本茶AWARD2016」香りの茶部門 プラチナ賞受賞微醗酵茶

3.  全国手揉み茶振興会認定「師範」市川喜代治作 手揉み茶 


 

今回の手揉み茶は425日に手摘みされた『やぶきた』。一度に数百グラムしか製造されない、希少な茶。temomicha.jpg製作者の好意がなければ、決して扱えない茶でもあります。ましてや「師範」の称号を持つハイレベルな熟練者が揉んだ貴重な茶。このような機会に用意するには、最高の狭山茶です。細いケンサキを伴った、長く太いダイナミックな外観。参加者の視線が茶葉に集中します。湯冷ましを使用しながら、ゆっくり淹れて、うまみ成分の凝縮した抽出液を呈茶。あるいは熱湯で抽出して、わずかな渋みと共に味わってもらったりと、様々な方法で楽しんでいただきます。 

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プラチナ賞受賞茶は、抽出液が参加者の喉を滑り落ちた瞬間から、萎凋香についての反応が起こります。それは「エッ」という華やかな声。それに対し、手揉み茶は一瞬間をおいてからのリアクション。おそらく、口中でうまみが確認できてからの応答なのでしょう。「ウーム」と唸るような、静かな驚きの声。うまみと香り、味わい方の差がアクションに表れたようで、興味深いものでした。



野木園の手摘みという素性以外は外観も内質も、全てに異なる手揉み茶と微醗酵茶。それでも私は両者に共通点を感じてしまう。それは口中に残る味。一切の苦渋味から開放された、極上の味。いつまでたっても口中が幸せの余韻で満たされています。 

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茶殻を比べれば一目瞭然、得心が行きます。左の微醗酵茶も右の手揉み茶も中心から茶葉周辺に広がる葉脈が目立たない。醗酵茶は萎凋工程により葉脈に残る水分を蒸散させ、手揉み茶は揉み工程により茶葉に含まれる水分を揉み出す。ゆえに苦渋味が残らない。もちろん、それは それぞれの工程が適切に行われたことの証左でもあります。 

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎