6月度.png入梅したものの、関東地方は水不足なのだとか。確かに428日のまとまった降雨以外、雨の影響が全くない新茶をすごした狭山茶業界。絶好調だった今年の一番茶を支えてくれた、ajisai.jpgもったいないほどの天候に感謝しております。それにしても 梅雨入り時期は例年並みながら、店前の小畦川は水流が細り、川藻が発生。一方、田植えの終了した野辺では みどりが濃く、植物の生命力が目にしみる季節です。いささか持て余し気味の「緑一色」世界にあって、目もあやな色彩を振りまいている花が目に留まります。あちらこちらの庭先で見かける紫陽花。赤やピンクより、水色・青系統の花が涼しげで、好印象。今年は花の色が濃いように思います。ajisai2.jpg雨の後は色彩が微妙に変わり、ことさら麗しい。その隣りには、やはり紫色の野草が前夜の雨に濡れ、さゆれていました。梅雨の合間の清涼剤といったところでしょうか。

 

 

釜炒り茶の新しい試みとして、在来種に挑戦。「在来」は二種類あり、ひとつは既存品種の種を植えたもので「実生」といわれるもの。『やぶきた』の種なら「実生やぶ」とか「マキやぶ」と呼ばれます。もう一つは以前から栽培されていた在来種で、「本在来」あるいは『ビンカ種』とされるものです。狭山では昭和の後半から品種化が推進され、「在来」は淘汰されつつあります。平成の初め頃には、ほとんどの生産家に「実生やぶ」の茶園がありました。現在、実生茶園を持つ生産家は二名。そして『ビンカ種』を生産・納入する生産家は一名となってしまいました。 

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その貴重な生茶葉を融通してもらいました。恥ずかしながら、摘採期に在来茶園を見たことがなく、生茶葉とも初対面。茶葉は小さく節間が短い。なにより目につくのがその色。品種物に比べて淡い緑色をした茶葉に混じり、朱を差したものや縁が黄色に染まったものがあり、実に様々な容姿が個性的です。ただ、摘採や蒸熱工程で新芽の均一性が要求される蒸し製法には不向きかもしれません。

zairai3.jpg製茶した外観は生茶葉の姿通りに小振りな形状。この日は最終揺青後の静置時間を長めに取ったので、茶葉周辺に赤味が目立ちます。その代わり 醗酵が充分に進んだようで、抽出液は濃厚な水色。味に濃度があり、苦渋味は皆無。特段おしゃれな萎凋香はないものの、味に特別な主張がない分、香気が立っているようにも感じます。微醗酵茶には充分な資質があると見ました。zairai4.jpg

 

 

あちこちで在来種の紅茶がつくられ、また『東方美人』を手掛けた人の話も聞こえます。『ビンカ種』は醗酵茶の世界で活躍できる能力を秘めているかもしれません。なんとなれば、ダージリンマスカテルフレーバーは『ピュアチャイナ』=中国在来種実生の専売特許なのだから。 

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎